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開発者スペシャル対談
- data / 2012.01.12
ダメージコントロールとヘアデザインを同時に考えた新発想。
確かなウェーブと感じられる質感。ワンダーシリーズ誕生!
次々と登場する新商品や短期間で生まれ変わるリニューアル商品が、サロンの棚を席巻しているパーマ液。「多様化する顧客ニーズに対応するため」と言えば聞こえは良いが、サロンの経営的、業務的負担は小さくない。そんな課題に応えるために開発されたのがワンダーシリーズだ。薬液本来の働きを深く追求した結果、わずか4種類のコスメ系薬液を組み合わせることで幅広い髪質がカバーでき、ほとんどの施術に対応できるという。開発メーカーの有限会社オレンジコスメ(愛媛県松山市)の研究員と開発に携わった美容師が集まり対談を行った。
ワンダーシリーズはものすごく先を
行っているということですね。
- 戸石 正博
- MASAHIRO TOISHI
美容師の傍ら、自ら薬剤の開発を手掛け薬剤知識に関する講習活動を全国で展開。薬剤や処理剤を使い過ぎないシンプルなデザインパーマを提唱している。
在庫を多く抱える事は経営的にも
作業的にも大きな負担だった
- 松原 正志
- MASASHI MATSUBARA
美容室DEW(愛媛県松山市)代表。薬剤知識に造詣が深く、ヘアケアにこだわったヘアスタイル作りに定評がある。ダメージレベルを最小限に抑え、繰り返し楽しめるパーマカラーを実践している。
パーマ市場が回復する余地は
充分にあると思いますね。
- 松下 真人
- MASATO MATSUSHITA
有限会社オレンジコスメ 研究員。
髪を傷ませないための
努力と工夫は結構していますよ。
- 渡邊 哲史
- SATOSHI WATANABE
- 4種類でほとんどのダメージレベルに対応。
サロンの在庫負担を大幅に軽減出来る。 戸石 : 通常サロンは複数のメーカーのパーマ関連薬剤を置いています。同じブランドでも髪質やダメージレベルに合わせ商品が違ってくるので、パーマ関連薬剤だけで何種類もの在庫を抱えています。
松原 : しかも特殊な専用パーマ薬剤は使い方が限定されているので、月に1、2回しか使わない。それでも製品の特徴や使い方を覚えないといけないので、在庫の多さは経営的にも作業的にもサロンにとって大きな負担になっているんですよ。
戸石 : そもそも同じパーマでも機械を使うか使わないかでパーマ液が変わること自体がおかしいと思うんですよ。髪に対する処方は一緒なんですから。ただ、機械メーカーからは「専用の薬剤を使ってください」と言われますよね。
松下 : サロン側の負担を減らすには、パーマ液をできるだけ簡素化する必要があると思いました。そこで種類を減らすにはどうすれば一番効率的か考えるうちに、リキッドタイプとクリームタイプの薬液を確立し、その2つを混ぜ合わせることで各種パーマに対応させる、というイメージが浮かんできたんですね。
渡邉 : 一方で薬剤の種類を少なくすると、カバーできるダメージレベルが狭くなってしまいます。そこでサロンのお客さまに最も多い髪質とダメージレベルを狙いpHの組み合わせを研究しました。最終的にpH=7.2とpH=9.2の2種類を製品化。それを組み合わせることでほとんどのダメージヘアに対応できるように工夫しました。
松下 : 結果的にワンダーシリーズはリキッドタイプ2種類(pH7.2と pH9.2)とクリームタイプ2種類(pH7.2とpH9.2)の合計4種類を組み合わせることで、ほとんどのダメージヘアに対応でき、しかもカール、ストレート、ホット系パーマなどに使えるという、今までにない簡易なものに発展させることができたんですよ。
戸石 : 薬剤の種類は少ないけど、対応幅は本当に広いと思いますね。この4種類で髪質の8,9割は対応できますからね。しかも粘性がリキッドタイプとクリームタイプの2種類に分かれているので、自分で簡単に混ぜ合わせることができ、いろんな粘性のパーマ液を作ることができるんですよね。
松原 : ここまで簡易にできたのは、システアミンを選択したことが大きいのでは?システアミンは健康毛からダメージ毛まで幅広く使えますからね。
松下 : 疎水性の高いシステアミンは、対応できるダメージレベルも広範囲ですし、比較的少量で効果を発揮するので、髪へのダメージも小さい。また、混ぜ合わせて使うことを前提にリキッドタイプもクリームタイプも同じ還元剤を使っているので、違和感なく混ぜることができるはずです。
戸石 : 混ぜ合わせるという発想も、ワンダーシリーズとこれまでの薬液との大きな違いですね。
渡邉 : 実際、リキッドタイプとクリームタイプの2タイプを作ったのは、戸石さんがおっしゃるように、薬液を混ぜ合わせるのに都合がいいと考えたからなんですよ。
松原 : 施術に合わせて自分で粘性を調整できる方が扱いやすいですし、還元剤が同じというのもシンプルで使いやすいです。強さと粘性を自由に作れるというのは、美容師としては計算しやすいですね。あと1液2液のセット販売の商品は、1液だけ欲しい時でも、2液も一緒に購入することになるので、余分な在庫が増えるんですよね。その点ワンダーシリーズは化粧品扱いなので、1液、2液を個別に購入でき、コスト削減にも貢献してくれます。
- 現場(サロン)と現場(研究室)の
ダイレクトな関係から生まれたサロン仕様の製品 松下 : 私と戸石さん、松原さんの3人は、3年ほど前にインターネットのmixiで知り合ったんですよ。
戸石 : 友人から「mixiにいる美容メーカーの人がいろいろ教えてくれる」という話を聞いて、松下さんにメールを送ったんですよ。メールをやり取りしているうちに新しい薬剤のテストを依頼されるようになりました。今ではオリジナルの薬液を作ってもらっています。
松原 : 私はmixiで戸石さんから松下さんを紹介されました。その後で気が付いたのですが、松下さんとは10年程前に、一度お会いして、薬剤のことを教わっていたんですよ。またオレンジコスメさんと私の店が結構近いこともあり「一度お会いしましょう」ということになり、それから薬剤のテストに協力させていただいています。
戸石 : 仕事のやり取りはほとんどメールですね。3人で顔を合わせたのは、今日がまだ3回目ですから。
松下 : 今回のワンダーシリーズもそうなんですけど、メールではいつも「こんな商品があったらいいなあ」といったアバウトな話が多いですね。「こんなものを作りたい」と目標を決めて話し出すと、その目標から先にいけないような気がして、アイデアが広がらないんですよ。だからいつも「あったらいいな」レベルの話でサンプルを作ってしまうんですね。それを2人に送って意見を聞くという感 じです。
戸石 : オレンジコスメさんが開発したトリートメントの質感がすごくよくて、私も使っていたんですけど、ある時「これに還元剤を入れたら面白いパーマ液ができるんじゃないか」という話を松下さんにしたんですね。
松下 : それが半年ぐらい前の話ですね。これがきっかけでパーマ液の簡素化をテーマにした研究、つまりワンダーシリーズの開発を思いついたんですよ。そこから約半年で一気に製品化することができました。それまでにいろんな薬剤のテストをお願いしていた下地があったのも良かったですね。
戸石 : 開発期間中は毎日何回もメールのやり取りをしました。「もう少し質感を良くできないか」とか、「どこそこの原材料を何パーセント入れて欲しい」とか。
松下 : 意見を聞いてサンプルを作り、それを2人に送ってテストをしてもらい、また感想を聞いてサンプルを作る。このサイクルをほぼ2日に1回のペースで繰り返しましたね。
戸石 : 僕の場合はサンプルでも了解をとってお客さまでテストすることがあります。もちろん薬剤の原材料や細かい数値を理解しているからできることなんですけど。
松原 : 私の店もそうですね。お客さまの髪に対する知識があれば、どのお客さまの髪に相性が良さそうというのが、サンプルの成分表を見てわかるんですよ。
戸石 : サンプルでも良い物を作ってくれるという信頼があるから、お客様にもお願いしやすいですね。ただ、ワンダーシリーズの場合は、最初のサンプルからクオリティが高かったですね。サンプルなのにもう一つくださいとか言っていましたからね(笑)。
松下 : 戸石さんからは原材料の配合パターンに関する要望が多かったですかね。非常に複雑な話になってくるのですが、その辺りのことを対等に話せるサロンさんの存在は、私たちにとって大変貴重です。
戸石 : 現場で欲しいと思っている商品があって、オレンジコスメさんのように研究の方とダイレクトに意志交換ができるのは素晴らしいですね。オレンジコスメさんのそんな社風があったからこそ、ワンダーシリーズが完成したんだと思います。1液と2液が合わさることで発現するトリートメント効果も、ワンダーシリーズならではの特徴でしょうね。強い被膜効果が現れ、トリートメントしたような感触になる。
松下 : 「トリートメントの中に還元剤を入れたら・・・」という当初の発想が実現できました。原材料の面からいうと、システアミンをベースにして、セラミドを配合しています。薬液の強さを十分に引き出すために、あえてPPT系原料は使用していません。
渡邉 : 全体的に油分を抑えているのも同様の理由ですが、一時的なものではなくて経時での感触を重視しました。髪を傷ませないための努力と工夫は結構していますよ。
戸石 : 前処理でセラミド系の成分を使うと、髪がパーマ液を弾くことがあるんですよね。ワンダーシリーズでは薬液の中にセラミドが入っているので、しっとりとした質感を出しながら、カールもしっかりかかる。薬液が前処理の工程までしてくれるんです。
松下 : システアミンを使っているのは、疎水性が高く広範囲のダメージレベル に対応できるからです。例えば初期のダメージは、チオやシスを使ったことによる親水性部分の損傷が多くなります。そういった髪はまだ損傷が起きていない疎 水性の部分にアタックしなければ、薬液として十分な効果を発揮することができません。それができるのがシステアミンなんですよ。
戸石 : ワンダーシリーズは薬液だけでなく、処理剤もかなり簡素化されていますよね。ラメラクリスタル、インナーCMC、ケラチャージ、グロスフィール、キトベールの5種ですが、組合わせることでさらに様々な状態のダメージヘアに対応することができますね。
松原 : リキッドタイプとクリームタイプの2液のpHが同じというのも使いや すいですね。1液同様、2液も混ぜ合わすことができるのでコントロールがしやすい。通常ストレートにしてからカールにする、という2つの手間が1度にできるし、還元剤も酸化剤も同じなので質感も変わらない。毛先だけ傷んでいる場合は、そこだけクリームを塗ることもできるので、本当に使い勝手が良いですね。
戸石 : カールの強さは同じ。でも、髪の根元と毛先で質感を変えることが簡単なんですよ。さらにトリートメント効果が期待できるので、「パーマは髪を傷める」という先入観を払拭できるのがいいですね。
松原 : 最近カラーは完全に根付いてしまって目新しさがないから、新色が出たぐらいではサロンの売りにならないんですよ。だからパーマで差別化を図りたいというサロンが増えていますね。
戸石 : サロンの広告を見ても、カラーよりもパーマをアピールするところが多くなっているのは確かですね。髪が傷まないのであればやってみたい、というお客さまも増えています。
松下 : ここ数年カラーに押され気味で落ち込んでいた分、パーマ市場が回復する余地は十分あると思いますね。
戸石 : カラーブームが来たとき、ヘアカラーをした髪にパーマをしたら髪が痛んだというケースがあって、その後に起きた現象がトリートメントブームなんですね。それを考えると今後は髪を極力傷ませないパーマ提案というのがキーワードでしょう。
松原 : そうなると使い勝手の良いワンダーシリーズは注目されると思いますよ。カラーに比べパーマはサロンの技術レベルにはっきり差が出ますからね。ワンダーのテストを始めてから、どんな髪がきても大丈夫と言える余裕ができました。
戸石 : 現段階のコスメ系薬液の中では、ワンダーシリーズはものすごく先を行っているということですね。