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もう、クリープパーマは失敗しない
- data / 2012.01.12
オレンジコスメ × 戸石正博(SHANTY)
シンプル薬液と少しの工夫で
もう、クリープパーマは失敗しない
多様化するお客様の髪質に合わせて、増え続ける薬や処理剤。でも、使い方は覚えきれないし、思い通りにならないし……。
それを克服する、夢のような薬液、『ワンダー』シリーズなら、クリープパーマも怖くない!
パーマ薬剤の問題を覆した
ワンダーシリーズの共同研究者
- 戸石 正博
- MASAHIRO TOISHI
美容室SHANTY(東京都三鷹市)代表
美容師の傍ら、自ら薬剤の開発を手掛け薬剤知識に関する講習活動を全国で展開。薬剤や処理剤を使い過ぎないシンプルなデザインパーマを提唱している。
- 出発点は近年増えてきたお悩み…
- ●「クリープパーマがうまくかからない!」
●「薬も処理剤もいっぱいで使いこなせない!」
薬剤のpHによるウェーブ効率の違いが明らかに!
新しい薬の開発にあたって、オレンジコスメは、戸石さんと共同でさまざまな実験を展開。そこで、pHが低い(中性や弱酸性)場合とpHが高い(アルカリ性)場合で、クリープパーマの仕上がりが変わることを示す、詳細なデータを入手した。
色々な髪質に対応できる「ミックス型」の薬液を発想。
「どんな髪にもOKな薬」は、夢ではなかった。少しの工夫で希望を実現できる「ワンダー」シリーズ。かんたんカスタマイズで、クリープパーマも思いのまま。
原因の追及&実験
解決には「シンプル」で「あらゆる髪に使える」薬液が必要
使用還元剤 | システアミン(ブロム7%) | |
---|---|---|
低アルカリ・低pH | 44.20% | |
高アルカリ・高pH | 50.30% |
使用還元剤 | チオ(ブロム7%) | |
---|---|---|
低アルカリ・低pH | 54.20% | |
高アルカリ・高pH | 61.90% | |
超高アルカリ・高pH | 66.20% |
- 結 論
- 応用が利くシンプルな処理剤ラインナップが必要
「現場主義」の薬液『ワンダー』の開発に成功!
「混ぜて調整、オッケーです!」
化粧品分類の『ワンダー』シリーズは、自由にミックス可能。2つの粘性、2つの強さの薬液を巧みにアレンジして、髪質や施術スタイルに合わせたコンディションをつくれる。しかも、強さをpHで調整したことで、混合時の強さの予測がしやすくなった。
従来のパーマ
従来のパーマ剤は、還元剤やアルカリ剤の配合を変えることで、薬剤の強さを調節していた。
『ワンダー』は
『ワンダー』は、還元剤の配合は一定に、pHを変えることによって、強さに差を出している。
そして、還元剤はシステアミンを選択。
- 縦軸ミックス(パワーの調整)
- 横軸ミックス(粘度の調整)
- クロス軸ミックス(パワー・粘度の調整)
[対談]『ワンダー』シリーズ開発秘話
〜常に、サロンと二人三脚で〜
- 戸石 正博
- MASAHIRO TOISHI
薬剤開発にかかわる美容師は多いが、中でも、戸石さんは「いかに現場で使える商品にするか」にこだわっている。
- 渡邉 哲史(インストラクター)
- SATOSHI WATANABE
オレンジコスメの渡邉インストラクター。全国を飛び回りながら、さまざまな実験に取り組んでいる。
幅広い対応力が魅力の「ワンダー」シリーズ。その開発に大きくかかわった2人、オレンジコスメの渡邉哲史インストラクターと戸石さんが、この画期的なアイデア誕生までの経緯を語る。
- -お二人が「ワンダー」シリーズを共同開発することになった経緯を教えてください。
渡邉 : もともとは、私の上司と戸石さんに交流があって、共同でさまざまな実験をしながら、サロン現場の意見を取り入れた薬剤開発を行なっていたんです。そして、私も新しい薬剤開発のプロジェクトに携わる時、「『SHANTY』に行って勉強して来い」と、言われたのが始まりです。
戸石 : 渡邉さんとはすぐ打ち解けることができて、腹を割ってパーマに関する色々な問題を話しあうことができました。その中で出てきたのが、「クリープパーマに対する研究が足りない」という思いと、「薬剤や処理剤の種類が多すぎて使いこなせず、サロンに在庫がいっぱい」という多くの店の現状です。
- – どのように改善を進めていったのですか?
戸石 : 1点目についてですが、当時、「クリープをするとよりパーマがかかる」ということだけが注目されていて、「どのくらいクリープすれば良いか」というようなところまで考えている人はいないように思えました。実際、クリープをしても思ったようにかからなかったり、逆にウェーブが出すぎたり、さまざまな問題があったんです。
渡邉 : 戸石さんと実験を繰り返した結果、クリープパーマのウェーブの出方に薬液のpHが大きく関係していることを突き止め、それを数値化することに成功しました。
- – その結果は、「ワンダー」シリーズにどのように生かされていますか?
戸石 : クリープの真実が分かったら、あとは、髪質やデザインに合わせてpHをコントロールする事が大事。でも、ただ薬液の強さの種類を増やしただけでは、先ほど上げた2番目の問題、美容師が薬剤を使いこなせていないということが解決できません。
渡邉 : そんなとき、戸石さんに美容師さんの現実を教えてもらいました。それは「強さの違う薬剤を混ぜてアレンジしているサロンが結構ある」ということなんですね(※)。
戸石 : 当然、それはルールに反することです。でも、合理的な考えでもある。だったら、はじめからそれ用の薬液をつくってしまえばいい、という流れになったんです。
渡邉 : 還元剤にシステアミンを使うことで、法的な問題もクリアしました。また、強さだけでなく、粘性も2種類用意して、状況に合わせて使い分けられるようにしたんです。
戸石 : 最初は粘性は3種類用意されていたんです。でも、それだと、使いどころが難しいことに気づきました。だから、これも「混ぜて粘性を調整できる2種類の薬液」の方向に構想が固まっていったんです。
渡邉 : 現場の声がダイレクトに反映された薬液。これは他に類を見ないでしょうし、これからもどんどん進化していくと思いますよ。
※医薬部外品分類のパーマ1剤同士を混合するのは、法的にNG。2人はこの現状を逆手にとり、新製品の開発に生かした。
クリープパーマに
pH値が関係する理由
クリープの際に移動する、毛髪内組織コルテックス。その移動にはアルカリの強さが関わっていて、移動時間を見極められないと失敗する。これまでの薬はpH値のコントロールが難しかったが、『ワンダー』シリーズではそれがかんたんにできるので、クリープ完了の時間が読みやすい。
薬液の強さと放置時間の調節でシンプル施術にひとひねり!
パーマに興味はあるけれど・・・というお客様には、ベーシックな技術にひと工夫を加え、パーマデザインのおもしろさを知ってもらいたい。
「ワンダー」シリーズのカスタム性をとことん生かすこんな施術が、また一人、パーマファンを増やす。
戸石さんのケミカルプラン
太毛・硬毛で、量は多め。全体にふくらむようなクセがある。そのため、カットでインナーレイヤーを施して、ボリュームダウンを図っている。ダメージレベルは2。
クセとダメージを考慮して、薬液は薄めのものをメインに配合する。そこへ、加湿やクリープ、水分のコントロールなどを加えることで、ウェーブの強さを調節。髪に負担が少ない薬液をチョイスできる方法だから、ダメージを心配せず、デザインと技術に集中できる。
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キーワード1:3
かかりがゆるやかで操作しやすい『ワンダークリーム7.2A』。そこに、『ワンダーカール9.2A』をわずかに加え、薬液の流動性と強さを少しだけアップ。これがコールドパーマであれば1:1の組み合わせが妥当だが、今回はクリープ期と熱を使い、少ない作用の薬液選定で大きく動かす。
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[毛先を守る3ヶ条]
① 中間と毛先で配合を変える
中間には1で紹介した配合の薬液を塗布するが、少しダメージがある毛先には、『ワンダークリーム7.2A』のみを使用する。
② 塗布部分にのみ、処理剤を使用
髪の内部にとどまる処理剤「インフィル」を使用。処理剤の使用はあくまで最低限にとどめ、全体は薬液の配合&塗布でダメージコントロール。
③ 塗布部分にのみ、処理剤を使用
中間用に配合された薬液は、強さと流動性が毛先用に比べて高いので、先に塗布すると毛先に流れてくる恐れがある。そのため、塗布は毛先から行う。
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放置時間を上手に使う
全頭で使用する薬液のレシピは同じだが、さりげないデザイン性とお客様の扱いやすさを加えるために、放置の際の状態をセクションごとにつくりわける。髪の水分量が、コルテックスの移動に影響するからだ(乾燥すると移動しにくい)。
あまり動きをつけたくない前髪は、そのまま空気にさらし、すこし乾燥させる。 ウェーブをしっかり出したいオーバーセクションは、ラップでつつんで水分を保持する。 ゆるやかに動きを出したいミドルセクション以下は、コットンパッドでくるむ。わずかに水分を吸うものの、蒸発はしないので、ちょうどいい水分量に。
薬液を塗布する中間〜毛先にダメージが少しあるので、「インフィル」を塗布。
パネルごとに、力の弱い薬液を使う毛先を先に塗布し、その後中間用に配合された薬液を塗布。
前髪は塗布後、ペーパーではさんで横に流しておく。10分後にテストカール。あまり毛先を引っ張らずに判断する。
水洗、「インフィル」で中間処理後、ワインディング。薄めのスライスで、全頭、毛先から中間までを平巻き。薬液の塗布箇所を越えるところまで巻くことで、跡がつくのを防ぐ。
セクションごとに乾燥の度合いをコントロールし、加温。オーバーセクションは70度で5分間、ミドル以下は80度で7分間行う。
加温後、2液を塗布。7分+7分の2度づけ。
RECIPE
■使用薬液/『インフィル』、『ワンダークリーム7.2A』、『ワンダーカール9.2A』、『ワンダークリーム7.2A』、『ワンダーカール2A』
■工程/前処理(インフィル)→毛先1液塗布(ワンダークリーム7.2A)・中間1液塗布(ワンダークリーム7.2A:ワンダーカール9.2A=3:1)→10分放置→テストカール→水洗→中間処理(インフィル)→ワインディング→加温→2液塗布(ワンダーカール2A)→7分放置→2液再塗布→7分放置→ロッドアウト→水洗
■ロッド径数/ネーブ:18ミリ、ミドルセクション:20ミリ、オーバーセクション:22ミリ、前髪:16ミリ
ケミカルプランはこう立てる!
処理剤だけに頼らないようにしよう。
パーマをサポートする処理剤はたくさんありますが、それらの特性をすべて把握できている人がどれだけいるのか、正直、疑問を感じます。それよりは、配合や塗布、放置時間等、サロンワークでの経験や実験を通して得られた知識をフルに活用して、薬本来の力で髪を守り、デザインをつくりだす。そんな方法を極めたほうが、ねらった通りの仕上がりになると思います。(戸石)