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化学のたまねぎ

トリートメントでダメージ毛は修復できないのか?

2015.07.16

修復の考え方の問題になるが、ダメージ毛を完全な健康毛に戻すことはたぶん出来ない。
ただ、それを以てトリートメントではダメージ毛を修復できない、と言うのは違う。
ダメージ毛にとってトリートメントは必要で、美容室においても当然必要なメニューであることは間違いない。

ダメージしたケラチン構造を元に戻すことが出来ないという話をそのまま文章にしてしまうと、元に戻らない=修復できない=必要ない、という短絡的な解釈が一人歩きしてしまう可能性がある。

車で事故を起こしボディが凹んだ場合、ほとんどの人は修復を試みる。
一度ゆがんだ金属が簡単に元に戻ることはないが、それでも板金して塗装して少しでも元に近い見た目に綺麗な状態に戻したいと思う。
板金技術者は少しずつ叩いてRを出し、表面もていねいに磨いていく。
どうしても滑らかにならないときはパテも使う。
金属的にどうかということより、如何に綺麗に元の曲線に仕上げるかを考える。
事故で曲がった金属を叩いたり磨いたりしたら、弱くなったり薄くなったりして強度等が落ちるので、そんなことはしない=元に戻らない=必要ない、素材が元に戻らないと言う事と見た目に綺麗にすることは全く違う。

ダメージ毛におけるトリートメントも同じで、材料工学的な修復ではなく、美しく見せるための美容手段として考えなければならない。
当然、そこに美しさを踏まえた素材の完全な修復が入れば、理想的なトリートメントになることは間違いない。

その昔、ヘアマニキュアが一世風靡した時に、開発に乗り遅れた誰かが「使い続けると毛髪表面がコーティングされて、それが剥がれる時にキューティクルが一緒に剥がれます。」っていうくだらない話を持って回った。
見たのか?って話だが、それをそのまま信じなければならない人たちもいた。
そんなもので剥がれるキューティクルは、ほっておいても日常的な摩擦で剥がれる。

要は伝え方の問題で、狭い部分にフォーカスして全体的な事を伝えていなければ、間違った方向に向かうこともある。

車に艶を出すならワックスが必要だ。
持ちを良くしたいならコーティング系のワックスも必要だ。
お金をかければかけただけの効果が現れるものだ。

毛髪も同じ。
好みや髪質によって評価が変化することは仕方が無いが、しっかり考えられたトリートメントは、それなりにしっかりした結果が得られる。

切るまでは美しく保ちたい。
これが現場の要望だろうし、我々が目指すべき方向なのだと思う。
そのためには、トリートメントは必要。
材料工学を楽しむ方はそれを楽しめばいいが、我々は美容に勤しむことにする。

頭の整理をするために色々な資料を引っ張り出すとき、先人の毛髪に対する見識の深さにはいつも敬服する。

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